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犬も食わない [あ行]

映画、レボリューショナリー・ロードを見ようか見まいか迷っているうちに、私の近辺では公開時期が今週で終わりです。1月24日に公開になって、一ヶ月もしないうちに終わりってどういうことです。客入りが悪かったのか。レオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットが夫婦役なのに。ケイト・ウィンスレットはこの役でゴールデングローブ賞を獲ってるのに。思うが、公開時期をもうちょっと遅くすれば良かったのでは。ケイト・ウィンスレットは別作品「愛を読むひと」でオスカーノミネートされているから、同時期の当作品も相乗効果で陽の目を浴びだす時期である。アカデミー賞授賞式は今月末だぞ。フライングだ。

そもそもゴールデングローブ賞の結果がきちんと浸透するのは、ゴールデングローブ賞発表から、アカデミー賞発表までの期間だと思う。現地アメリカですらそうなのだ。そりゃ日本でもネットで情報は逐一入るし、WOWOWとかで授賞式をオンタイムで流すかもしれないが、NHK BS1月末の総集編でチェックする人は多いはず。で、授賞式で紹介される場面に触れて「見たいな」と、思い立ったくらいの時期に終わり、ってあなた。

レボリューショナリー・ロードの50年代米国郊外の背景は魅力的なのだが、見ようか見まいか私が迷っている理由としては、幸せいっぱい夢いっぱい愛情いっぱい運命の二人と思われた夫婦、妻は女優を夢見てた夫婦、しかもおそらく本当に才能があった彼女(タイタニックを反映したこのキャスティングは絶妙。これ以上、説得力のあるキャスティングは無いよな)その二人がお互いのためと思って妥協に妥協を、歩みよりに歩みよりを重ねる分だけ、次第にすれ違い、困難に陥ってケンカを繰り広げて、さてどうなる、という話だからで。
夫婦口論のシーンって概して私には猛烈に退屈だからです。

自分に照らし合わせてみて身につまされたりする方々にとったら一見の価値もあるのかもしれないが、犬も食わない代物をどうしてお金払って見させられなきゃならないのさ。「風と共に去りぬ」でも、スカーレットとレッド・バトラーが結婚して口論を繰り広げるようになると、途端にどーでも良くなります。好きにしなよ。二人で解決してくれよ、観客を巻き込むなよ、勝手にすればいいじゃん。夫婦間でさえなければ、口論のシーン自体は、私はたいてい好きなのです。精神的なアクションシーンというか。法廷ものなんて終始、口論といっても過言でない。

しかし唯一、夫婦口論のシーンで猛烈に良かったと思えるのがあって「The Hours」めぐりあう時間たちのニコール・キッドマン演じるヴァージニア・ウルフと夫の口論。「めぐりあう時間たち」の映画自体は、フェミニズム色を強調しすぎで、しばしば鼻白みたくなるし、しかもめぐりあってないじゃん。「めぐりあわない時間たち」にしたほうがよかったんじゃないの、なのだが、それでもキラキラした破片があちこちに散りばめられていて、くっそー、嫌いなのに良いってどういうこったい悔しいな。その頂点が、うんざりなはずの夫婦口論のシーン。春先か秋口か、英国の郊外の駅で、澄んだ空気に、よどんだような温かい日差しの当たった、駅員しか誰も居ない昼下がりの板張りのプラットホームにおいて。少々精神を病んで食事をまともにとらないヴァージニア・ウルフと、家を黙って抜け出した彼女を探して駅に妻を見っけた夫が、猛烈な口論を繰り広げる場面。なんか二人ともやつれててね。まだけっこう若くて老けていないはずなのに下手すりゃ初老くらい、やつれて見える。

夫は最初、自分の要望を言わないで、君のためだとか使用人への義務だとかいう押しつけがましい冷静な言い方を試みる。ネリーというメイドが居て料理人なのだが、しょっちゅう食事に面倒なけちをつけるヴァージニア・ウルフを快く思っていないおばさんで、このネリーにかこつけ、
「ネリーが手間ひまかけて、夕飯を仕度してくれている。君はネリーの食事を食べねばならない義務がある」
早口で小声で切り出すのが、すっごい哀れなのだ。ヴァージニア・ウルフが理性的且つ感じやすいので、夫は感情的に飯を食えと怒鳴ったり、食ってくれ、とか言えないんだなあと分かるわけです。

それに反論するヴァージニア・ウルフのニコール・キッドマン。この人がこれでオスカー獲ったのわかります。やつれたメイクをほどこして、声もしゃがれてて、説得力がある。登場シーンも少ないのに、この駅のホームの短い口論のシーンが、そこだけ宙に浮いたみたいに良かったのだよね。

だけど中身はけっこうありきたりな、あーこういう中身の口論、いままでに死ぬほどいっぱい鑑賞してきて、どれもすっごい詰まんなかったなあ、お金と時間を返してよね的な夫婦の言い合い。なんだけど、すごく良いのです。何がどう違うのかいまだに判別つけがたい。やってる二人が上手いだけか。言い合う場所と時間設定が良いのだろうか。――君は既往症があるじゃないか。君は 二度も 自殺未遂をしてるじゃないか!
……と次第に声を荒げて、言い合うけど罵倒しないんだ。最後、言い負かされた夫が肩をうなだれ、駅のベンチに腰を下ろしながら、ふと「空腹かい?」って訊く。「僕は腹がすいたよ」と。

さて、レボリューショナリー・ロードの夫婦口論のシーンが果たしてそこまで良いのかどうか、気になりつつDVDまで先送りするかどうかである。

追記:
映画のレビューをブログにアップしない自己規制は、5年を越えた映画については解禁でひとつ。
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