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伊藤計劃氏 逝去 [あ行]

わたしがこの人のブログを読みだしたのは、たぶん2007年7月で、佐藤亜紀氏のブログを読んでいたときに出てきて、なになに……? と見に行ったのがきっかけ。

過去ログから読み漁りだしたのだけれど「ブラックホークダウン」の映画の批評が的を射ていて、それからはせっせとこまめに読みに行くようになった。わたしは「ブラックホークダウン」をアメリカの映画館で10回くらい見たのだけれど、日本の友人にすすめてもことごとく評判悪く、無論、映画は好き嫌いがあるので、嫌いとか苦手とかそういう嗜好はもっともでいい。ただ、そうでなく日本での受け止められかたが、何やらことごとく偏っている様子で。おまけに日本に帰国してからテレビでやっていた吹き替えの翻訳にぶったまげ(間違ってはいないけどそれは誤解をまねく……というかこの映画の一部分しか分かってないよ、そこカットするのかよ、全体の意味が違っちゃうよ等々)いろいろモヤモヤして、ああ何、もう私ってマイノリティでいちいちこだわってたらやってけないかな、とか思っていたときに、伊藤計劃氏の映画の評を読んで、なんだか安心したのだった。あ、ここにちゃんとこういう人が居るんだ、と。

そんなこんなしている間に、私も日本SF新人賞で受賞できて、作家になれたので、もしかしたら会えるチャンスあるかもしれない、と思っていた。会ったところで、私は伊藤計劃氏みたいなタイプのSFを書いていないし、あんまり詳しくマシーナやら武器の説明を延々されてもわからないし、メタルギアとか全く知らない(ゲームをやったことすらない)けど、ブログいつも読んでるんです、ってご挨拶に行きたかった。年齢も近いし、高校時代の同級生の友人が武蔵美に行っていて、伊藤計劃氏はムサビだから、もうこうなったらこじつけで(たぶん学科がちがうんだけど)そのへんから話題切り出してとにかくおしゃべりしたいんだ、映画の話をしたいんだ、私、けっこう秘密機関萌えなんですけど、もしかして伊藤さんもそうじゃないですか、と打ち明けたいんだと、そんなチャンスを漠然と夢見たりしていた。(たしかそれっぽいことがハリポタの「不死鳥と騎士団」の批評で書いてあったのである。ハリーが魔法省だか情報省で異端審問チックなのにかけられて、ちょっぴりつるし上げ食らう冒頭のシーンですでに満足「官僚および審問会大好きな伊藤~」と。)

私は、伊藤計劃さんの「虐殺器官」などの出版物よりは、もっぱらブログの読者にすぎなかったのだけれど、しかも本が出版されてからは、ブログに品が出てきてしまい(笑)、文体も格が出てきてしまい(笑)、ちょっと本音が見えにくくなったりもしていたんだけど(笑)せっせと見に行っていた。

ブログにあった氏のスタンス「病魔と闘うとか言ってる人見るとちょっとうんざりする、まあそういう人はそういう人でいいけど、悪いけど戦いたかないし、逃げれるなら逃げてーよ、逃げられないからしょうがなく受け止めつついるんだってば」みたいな(私の要約なので偏ってるかもしれないけど)そんな伊藤計劃氏のドライでやさぐれ気味だけど、絶対ユーモアを忘れずに、だけど時々どうしようもなく弱気になったりしているのが、人を惹きつけ面白く哀しくて目が離せなくて、とにかく良くなってほしかった。

しばらく快方に向かって見えたときもあったのに、ただ今年に入ってからは更新がずっと途絶えていた。気にしながら、まだかな、更新まだかな、またいつもみたいに退院しました映画見ました、と007とボーンシリーズの比較とかやってくんないかなあと思って、今日も更新はまだで、佐藤亜紀氏のブログに寄ったら、伊藤計劃氏とか遺体とかいう文字が飛び込んできて、ちょっと一瞬受け止めきれずにうろたえた。

日本SF新人賞受賞作家は、ほぼ自動的に日本SF作家クラブの会員になるので、私も日本SF作家クラブの会員なのだが(幽霊会員みたいなもんだけど)、ほんの先日、今年に入ってから、伊藤計劃氏をSF作家会員に推薦という議題が提出されて可決されたばかりだったように思う。もしかすると来年とか日本SFの総会のときに、お目にかかれるかも! と思っていたのに。伊藤計劃氏のほうが年齢も作家デビューもいろいろ全部先輩だけど、年齢もデビュー時期も近いので、なんとなく勝手に親近感を覚えていた。友達にも「この人のブログでこんなこと言ってたんだけどさ」と日常会話のネタに出すほどだったから……。

結局、若いときの癌って手遅れになるとあんなにほうぼう手を尽くしている感があったのに、ずいぶん医学は進歩してるのに――。氏がSFに傾倒したのは、勿論もともとの好みとかあったろうけど、伊藤計劃の書く世界では伊藤計劃の病気なんか治せるような世界だったからじゃないのか(ちがうかもしんないけど、もう突き止めようが無い)
あーあ!
と、残念な気持ちでいっぱいです。残念だったのは一番本人だと思うけど。だって今年こそは元気になって、とブログに書いてあるんだ。http://d.hatena.ne.jp/Projectitoh/20090107

私が一番好きだったブログは2007年8月2日付の「ある麻薬の話」
たぶん最初ラフで打ったときから、数日後に誤字や文体を少し修正したと思われて(気に入っていたので幾度か読みにいったときにそう思っただけなので、くわしくはわからないけど)私は最初の、ちょっと文体、はちゃめちゃ気味だけどリアル感吐露、みたいなほうがヴィヴィッドに良かった。……のだけれど、修正後のでも存分にいいです。
http://d.hatena.ne.jp/Projectitoh/20070802
=====正直、この方の映画評はどれもまるまる同意できるものは無いんだけど、にもかかわらず、そっかー、なるほどそんな見方、たしかにできるかもなあ、そこまでの洞察をするかあ、と意図に反していてさえも興味深く、たとえ見たことのない作品でも読むのが楽しかったのだ。
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