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絵空事とは異なる次元 [あ行]

先日の金曜日に地上波で映画『ゼロ・グラビティ』(Gravity)をやっていたようで、
私はこの映画、相当、好きです。

近年、我ながら珍しく、ど真ん中ストライク、映画館で打ちのめされて帰ってきた作品で、
後半なんて映画館のシートにぐったり寄りかかって泣きまくっていたもんです(感動以前に、人間としての根源的な恐怖感に打ちひしがれたせいで。さすがにこんな極限状態は無理だよマジでもう太刀打ちできない怖すぎる……と)。
たいていの人が似たような体験をしたかと思います。

DVD化されたとき、すぐさま、そこそこ年配の身内に「見て! 良いから見て!」
と持っていって半強制的におすすめして帰ったのだが、
「見ました」というメールが、あまりにも的外れな感想しか返ってこなかったのだった。

だからつい、
「最近どんな映画を見ても、ぼんやりした感想しかわかないみたいだけど、あんまりにも何を見ても何も面白くない……というのがたびかさなって度を超すなら、体調が悪いか、認知症のはしりか、鬱病かもしれません」
と本気で心配してメールしちゃったくらいである。

それくらい、この映画は年齢や性差を問わず、人間の根源的な恐怖とか帰巣本能とかに訴える、
いい意味でハリウッドだからこそできる普遍性の高い作品だと信じて疑わなかったのだ。

しかし先方の感想は、
「あなたほど宇宙に夢中じゃないし、正直、宇宙のことが良くわからないので、へーえ無重力空間って、こんな感じなのですかね? まさかまさかこんな次から次へとよくもまあ、悪いアクシデントばっかり考えつくものですよね、ある意味でこれも一種の御都合主義的展開」
というのが素直なリアクションだった。

上記のようなリアクションはかなり稀なんじゃないかと、今でも私は思っているが、その人によれば、
「ジョージ・クルーニーが呆気なく退場で、生きて帰ってきたと思ったら、なんかアレだし」
みたいな。

やや、そこは確かにストーリー上、要となる部分でもあるけれども、
そこが映画の感想を左右しないというか、
むしろ、ああいう立ち位置が、実に心憎いキャンスティングなんじゃないか……。

私より年齢が上の世代は、よほどの「宇宙大好き」洗礼を受けていないかぎり、
宇宙に対する憧れも恐怖もさして抱いていないというか、
宇宙について常識的に、知識や想像力が欠如しているのかもしれない……。
私の世代では中学の時「将来、宇宙飛行士になりたい」という理系の女友達とかがいた。

ゼロ・グラビティは、
SFにおけるフィクション部分と、現実に起こりうる境目ギリギリのリアルさが際立っており、
だからこそ手に汗握り、
理系じゃないけど宇宙は普通に好きな私からすると、ノックアウト感が募るのだが。

何がSFで、何がリアルか、その差すらもきちんと区別できない人には、
異空間における単なるパニック映画にしか映らなく、
孤立無援おつかれさん映画としか受け入れられない。

「そもそも宇宙飛行士なんて、大統領よりも、オリンピック選手よりも少ない、
選ばれたごく少数の人しかなれない雲の上の人間だし。——文字どおり雲の上の」
という感覚しか持ち合わせていない人にアピールするのは困難な作品で、ハートウォーミングなお約束が皆無。
その媚のない部分が、余計に魅力的なのかもしれない。

国立情報学研究所というところで私は非常勤で勤務していた時期があるのですが、
そこでは『国際宇宙ステーション搭乗 宇宙飛行士候補者募集』
というリーフレットが誰でも自由に入手できる場所に普通に置いてありました。

こないだ念願の本棚を買って、ようやく搬入と転倒防止器具の設置が済み、
私は今かなり大々的に、本やら、ためこんだ様々なプリントアウトなどを整理している真っ最中。
作業効率を上げるために、やらねばならない雑務だったのを後回しにしすぎていたので仕方ないが、
仕事場が現況てんやわんやで、わりと原稿が手につかなくて困っている。
その作業中に、当時(2008年)の宇宙飛行士候補者募集のリーフレットを見つけた。
スキャンしてみました。こちら2枚ではなくて表面と裏面です。

宇宙飛行士募集2008JAXA.jpg
(クリック推奨。原寸大で見られます。)

宇宙飛行士2008JAXA.jpg
(クリック推奨。原寸大で見られます。)

2008年当時の募集以来、JAXAは2016年現在までに募集をかけていない(たぶん)。
年がら年中、募集していて応募できる職業ではない。
いっぽうで、年齢制限も性別制限もなかったりする。

こういう謎資料をクリアファイルに無造作につっこんで棚に積んでおく癖があるので、
仕事場がどんどん紙に侵食されてきて格闘中なのですが、
これをちょっと読むだけで夢が広がったり、逆に、夢が潰えたりする部分がある……というのは貴重。

この応募条件を見ながら、
(自分には宇宙飛行士に応募するのに、何と何と何の条件を満たせていないか)
(仮に、これと、これと、これをクリアしたとして、さらに数ある資格者の中から万一にも試験の結果、採用されたとしても、訓練業務の一環としてロシア語も習得か。まあ宇宙だものな、英語とロシア語が共通語か)
等々、ほんの一端でも具体的に想像できる余地があるというのは捨てがたい。

宇宙飛行士といえば=「雲の上の人」
ではなく、
どういう資質が重宝され、自分よりも何が秀でて適格であるとされ、必要最低条件としてどんな訓練をこなすのか。
積極的に情報を集めなくとも漠然としてではなく身近で自然に触れえる情報の質が、
物語をどれだけ満喫できるか否かを左右する部分は否めないのかも……。
と思ったりしながら、この手の資料を処分すべきタイミングを逸するのである。