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紙書籍『黒猫ギムナジウム』(講談社ボックス)につきまして [ニュース]

『黒猫ギムナジウム』の本が、現在、品切れ状態です。

一週間ほど前に、アマゾンや楽天ブックス、丸善ジュンク堂などをはじめとし、
すべてのオンライン書店で入手不可能・在庫なしとなっているのを知り、
私に一抹の不安が。

数年前、日本SF新人賞受賞作の『黒十字サナトリウム』で、似たような状況になった時、
版元の徳間書店が私の本を断裁処分していた。
まさか『黒猫ギムナジウム』も同じ末路をたどったのか?

『黒十字サナトリウム』の時は、担当編集者も断裁処分について把握していなかった。
日本SF大賞の贈賞式にお呼ばれして出向いたとき、
担当編集者をつかまえて、かくかくしかじかなのだが、売り切れてるわけはないですよね? 
そう尋ねたところ、
売り切れるはずはない。え、在庫なし? 本当に? アマゾンが在庫を切らしてるだけじゃなくて?

販売部に問い合わせてもらったら、
本は市場に出回っている冊数しかなく、
版元が倉庫に保管しているすべてを、断裁処分にしていたのが判明した。
いくらなんでも見切りをつけるのが早すぎると思いましたが。
売上げの初動で、今後の採算を予測して、倉庫の場所塞ぎだと、見切りをつけられたわけです。

あとで『カンパニュラの銀翼』で、アガサ・クリスティー賞を受賞したとき、
それまでは私の『黒十字サナトリウム』を知らなかったが今こそ買って読みたい、
という読者の方々は結構おられた。
しかし一度は大量に断裁した本を再度重版するほど、出版社は採算度外視で本を刷ったりしない。
断裁した分もカバーできるだけの売り上げが見込めなければ、
版元にとっては重版するだけの帳尻が合わないのです。
今でも『黒十字サナトリウム』の紙の本は絶版のままです。

そのトラウマがあったので、
またか……またなのか~
かなりナーバスな心地で、版元である講談社に問い合わせました。

「講談社倉庫でも現在品切れとなっています」

完売したのか……!
売り切れたのか。そうか……良かった。

2011年、当時の担当編集者に「中里さんの本など出さないほうが、うちにとってはメリットなのが、わからないんですか。売れないとわかっている本を出す必要などありませんからね。黒十字サナトリウムも、初動が悪くて徳間書店で見切りをつけられて、断裁処分になってますよね」
という内容を(キレイ目に要約しました)メール等で悪しざまに言われ……。
編集者のミスで誤字脱字になった部分に、クレームを入れるも、
「それでは重版するときに、思う存分、直してください」(重版なんてなるはずありませんが)
という対応をされて、
私としては、
(すぐには売れなくとも、きちんと自分の信じる物語を丹精こめてつくれば、必ず手に取ってくれる読者はいる。なかには面白さを理解してくれる読者もいるはず。時間はかかっても、きっと)
そう信じていましたが、裏付けられるだけの実績がなかった。

断裁されてしまえば、届くべき人のところにいつかは届くという望みを完璧に断たれるので、
――おお、売りきれたのだったか……。胸をなでおろす。
良い本だと自分が信じた物語は、時間はかかれど、きちんと読者に届けられる、
「初動がすべて」
ではなかったのだと。

昨今、売り上げは初動がすべて、という考えが一般的に蔓延しています。
私の本のように読者を選ぶといわれる作品、シリーズものでなく一冊が長い単行本は、
初動が良くないので初版の刷数がものすごく少ない。
内容如何以前に、売りにくいから、版元はいっぱい刷りたくないんです。
同じ講談社の『みがかヌかがみ』は、『黒猫ギムナジウム』の半分の部数しか刷られていません。

『黒猫ギムナジウム』もこれまでの売り上げ動向などから、
現時点では、すぐには重版をかけられないとのことです。

黒猫ギムナジウム』は、クリーク・アンド・リバー社から、キンドルをはじめ電子媒体で出ています。
昨今は、タブレット端末の性能も上がってきて、かなり読みやすくなっていますし、
人によって生活スタイルは違う。
たとえば入院しているときに思いついた本をすぐさま読みたいとか、
長時間移動中に本を読みたいなんて場合は、
荷物にならないし、人に頼まずに調達できるので、タブレット端末で本を読めるのは便利かと。
いろんなオケージョンに合わせて、いろんな媒体で利用できるのは、捨てたもんじゃない。

ただ、本好きは物語が好きなのと同様に、本という質感が好き。
私自身、本は紙書籍で読めるのがベストな楽しみ方だと感じています。
それに、マイナー作家である私の本までたどりつき、最後まで読んで、好いてくださる読者は、
ほぼ間違いなく「本好き」ではなかろうかと。
だからできるだけ紙の本でお届けしたいと思っています。

一つ、楽観視できることと言えば、
現在の担当編集者は『黒猫ギムナジウム』をわりと好いてくださっている感触が。
重版したい、という思いは共通の意向としてあるので、その分、障害は少ないかなと。

丁寧に読み応えのある本をつくっていれば、初動は悪くとも、じわじわ売れる。
長い目で見れば、結果的に黒字になる。
中里友香の本はそういう売り方が通用するのだと、
そんな実績が一つできたと、分かってもらえたら……。
作者であれ、自分ではどうにもできない部分があるのですが、
再度、紙の本として入手できるようにしたいです。

ひょっとして続きを書けばいいのか……?
だとしたら、そんなの余裕で頑張れるぞ。
ある程度、時間はかけると思うけれど。