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Measles, Mumps, Rubella [ま行]

アメリカの大学に留学した時、
わたしはひとまず語学留学し、
その後、四年制の本科に入ったのですが、
大学の本科の新入生健康診断において、がっつり予防注射を打たれました。

語学留学においても、日本の保健所で健康診断を英語で書いてもらって、
留学先に提出するのが渡航前の必須項目だったですが、
そのときの印象は「アメリカの学校は結核に神経質だ」でした。
肺のレントゲンも添付したし(←うろおぼえ)
BBCとかツベルクリン反応とか、その辺の過去の接種歴等を、そっくり洗われた。

たぶんエイズやHIVなどがさほど珍しくなく、
結果的に、結核などの感染症が珍しくもないのだろうと、勝手にわたしは推測した。
昨今は日本でも結核流行の再燃がさほど珍しくないが、
当時は、まったくそんなことはなかったので、「うわぁアメリカ……」と強烈に思いました。

ちなみに、結核の痕跡があると受け入れてもらえないケースが多い。
学校が受け入れないのではなく、おそらくは国の基準で受け入れないのでは。
完治という証明ができなければいけないはず。
留学生の友人は、子供のときに結核に罹って肺に微弱な影が残っていたために、
入学のタイミングがずれて、おかげで留学が数年遅れたと、その面倒くささを語ってました。

むろん結核関連だけでなく、
シュワルツ株(麻疹ワクチン)を何歳児に受けたとか
母子手帳とかまで引っ張り出してきて、診断書を書いてもらって、ただでさえ、けっこう面倒なのだ。

で、数か月の語学留学のときはスルーだった予防接種が、
本科では診断書をパッと確認された瞬間に「はい、あなたはこっち」
わたしは大学のヘルスセンターで、
「注射を受けてください」と。

"Really?"

わたしが地味に悲鳴を上げたとき、後列のアメリカンの学生数人が、
うわ、こいつかわいそう、気の毒といった同情を込めた感じに、くすっと笑ったのを覚えてます。
まあ確かに、気弱な感じに控えめ伏し目がちでいた留学生(わたし)が、
目を見開いて突如はっきり
「まじですか!?」
といったのでウケたんだろう。

問答無用で受けさせられた予防接種がMeasles, Mumps, Rubellaの三種混合。
Measles(麻疹:はしか)
Mumps(三日ばしか おたふく)
Rubella(風疹)
いわゆるMMRだったかと。

私は幼少期にシュワルツ株の麻疹ワクチンを複数回打っていた記録があったし、
風疹も中学の時に接種を受けたし……みたいな感じで、
どれも日本では免疫があると認められている状態だったので(当時、二十歳くらい)

なんで注射打つんだー、日本人を未開地の病気無知とか思ってんの、え?

甚だ不本意だった。
今ほどひどくなかったけれども、当時からアレルギー体質ではあったので、
いきなり海外でわけわからん予防接種を受けさせられて、
拒絶反応でも出たらどうしてくれると、うろたえた。
(中学生のとき風疹の予防接種を受けた折も、
体調に不安があって学校では受けられずに、
近くの医療機関に保護者と出向いて受けたくらいだったので。)

アメリカの大学の保健室で、「はい寝て」と、カウチに寝かされ、
さっさと腕を消毒され、キュッと注射液をおしこまれて、
何事もなくおしまい。
ありがたいことに体調も悪くならなかった。
ちなみに無料。
(というか留学生はたしか健康保険料みたいなのをアメリカ人より多めに支払う設定で、
すでに込みこみと言いますか。)
男女問わず上記のMMR(風疹こみ)の接種を受ける。

大学院に進んだ時も、学校を替えたので同様の健康診断があり、
また注射を受けさせられたらたまんない、
と、大学から健康診断の紙をコピーしてもらっておいて、提出した。
「これは助かる。コピーで問題ない。パーフェクト!」
と重宝され、注射を重複して打たれることもなく、

むやみやたらと日本人に注射打つわけじゃないんだアメリカ……

と知ったのでした。

日本に帰国して社会人になってからチラホラと、
このごろになっては、やたらと、
抗体の有効期限がうんぬん、
風疹だの、麻疹だのの流行について耳にします。
で、留学当時アメリカで問答無用とばかり予防接種を受けさせられた理由を痛感する。

日本は島国だし、
実際、いろんな伝染病や病害虫を水際で堰き止めている。

いろんな人種が揃っている多民族国家で、
各大陸を行き来しまくっている(=同時に病気も行き来するのが日常)
そういう生活が何世紀もにわたって根付いている土壌とちがう。

だから「自分がきちんとしていれば大丈夫だ」
という観念が根強いけれど、
伝染病は自分がきちんとした生活を送っていても伝染します。
だからこそ伝染病なのだ。

そうなると病気に感染した人を元凶として責めまくる村社会的な傾向が強いが、
無論、必要に応じて隔離対策は絶対重要ですが、
そんなことより予防接種をもっと周知して、
大人になっても、ある程度、半強制的に受けさせるようにしたほうが、安心だし現実的。
やがてオリンピックもするんだから、必要なんでは?

あ、それから――


『視線』 [さ行]

先月、鈴木康士氏の画集が出ましたね!
鈴木康士氏は、私の著作『カンパニュラの銀翼』の単行本の表紙、文庫本の表紙、
両方ともを描いてくださった装画家です。


鈴木康士画集 視線

私は楽天ブックスで先月注文ゲットし、
わりと気軽に、ひゃっほう楽しみ~とページを開いたら、
『カンパニュラの銀翼』の装画が、
どーん!
と出てきて、うわぁァッ……!
嬉しい喜びに体温が上がりました。
エアコンの設定温度を一度下げねばならぬほど。

最初はちょっと上ずって、若干、目線がすべり気味に、どんどんページを繰って次を見たくなるのを、
かろうじてこらえているうちに、今度はなんかゾクゾクきて、
エアコンの設定温度を一度戻さねばならぬほどに。

好きな装画家さんの画集を買って、
ページを開いたときに、自分の作品の表紙絵が出てくるインパクトって、
なんかすごくて言葉にならなく。
まじで語彙力ログアウト。

画集のタイトルが「視線」であるように、
描かれる人物の視線がいちいちゾクっと妖艶で。
冷たい透明感にみなぎっていて、そこはかとなく突き放すような空気感と、
惹きつける吸引力との距離感が、素晴らしいのだ。

神永学氏との対談も掲載されており、
そこで鈴木氏が、神永学氏の小説の登場人物「八雲」について、
「瞳が赤いっていう特徴しか、外見についてほとんど書かれてない。
小説であればインパクトがある特徴だと思うが、イラストだと瞳はものすごく小さいので、
どうやって特徴を引き立たせるか、苦労した」
といったようなことを語っておられます。

インパクトを出すために、大きめに誇張するといった稚拙な表現にしない、
バランスを崩さず、特徴を出すために、創意工夫があるんだな、やっぱり~。

『カンパニュラの銀翼』の装画を引き受けていただいたときに、
担当編集者を通じて、お伝えしたか、
それとも鈴木康士氏に直接メールか何かでお伝えしたか、
あるいは伝えようと思ってやめたのか、よく覚えていないのだが、
――鈴木さんの描く人物は、男性は男らしくかっこよく、
あるいは女性は女らしくフェミニンな色香たっぷりなのにもかかわらず、
女性も男性もちょっと中性的な空気感を漂わせていて。
通常、男性のイラストレーターが女性を描くと、
わりと、どうしても性的アイコン的なパーツが大きく誇張されやすい。
線もしつこくなりがちで、
女性から見ると、違和感が募ったり、時には嫌悪感すら抱かされたりするときもあるのに。
そういう、いやらしい部分が全く感じられない、透き通った魅力があります。

……にもかかわらず、女性も男性もリアルに具現化されていてなお美しく、
骨に芯が通っていないとか、血が通っていないような感じはなく、
したたるような影があって、そのバランスがたまらなく素晴らしいんだ――。

だからこそ『カンパニュラの銀翼』のシグモンドが描かれるにあたって完璧だったのだ。

人物像のシルエットのバランスとか、そういったことは、だから当時もかねてより、
良いなぁ~と私は認識していたのだが、
今回、画集を見て、あらためて感じたのは、
デザイン的なセンスが――背景とか小道具とかそういったもろもろ、ひっくるめて――
一つ一つ緻密で凝っていて、手を抜いてなくて。
絶妙に配置されているんですよね。
カンパニュラ~の単行本でいうなら、小鳥とか、懐中時計とか……etc,
小鳥を手にしたシグの片手が、手袋をはめてるの、さりげなくほんと心憎いんですよ。
これは私の小説の――この物語の表紙なんだ、と実感できるんです。作者も読者も。

どうやって描いてるんだろう……と思っていたら、
付録の特典データCDが、かなり雄弁にそのあたりも見せてくれるのであった。

ものによっては幾層にもレイヤーをわけて、人物や背景や小道具などを描き分けて、
そのレイヤーを統合するまでに、さまざまにバランスを見ながら、
「どんぴしゃ」な一枚絵を仕上げるのだなあ……。

その過程がデータCDで見られるのが、かなり勉強になるし、
見ごたえあります。

『カンパニュラの銀翼』に関していえば、
文庫版の制作過程がデータCDに収録されています。
カンパニュラ~の文庫版は、封蝋をモチーフにした窓枠の内側に、
シグモンドやエリオットやクリスティン、
またベネディクトを想起させる黒い木立……塔のような影が、描かれます。

窓枠に切り取られた空間に、
主要登場人物を3人も配し、でもなお、せま苦しくなく、世界観の奥行きを感じさせるには、
そうか、こうやって描いたのか……!

シグモンドの全体像を、
風でひるがえるコートの空気感みたいなものまで、いったん描いているんですね。
最終的には窓枠や、窓枠の外の黒いベタで塗りつぶしてしまうとわかってる部分すらも。

だからこそ窓の向こう側に見える人物であっても、
四コマ漫画の絵みたいになってしまわず、
動きの一瞬をとらえたような空気と奥行きの深さが伝わってくるんだ。

『カンパニュラの銀翼』のスピンオフ「風切り羽の安息」
この短編がミステリマガジンに掲載されたときも、
ぎりぎりのスケジュールの中、扉絵を描いていただいたのですが、当初は雑誌のモノクロ絵。
これがほんのり彩色を施されて画集に載っていたりもします。

描き下ろし絵や、個展に展示された絵なども数々あり、
海外のグラフィックノベルっぽいテイストなのも。
あとまた、各イラストに添えられている、
粟粒のごとき小さい活字のコメントが、面白い。


特急列車 [た行]

昨日の日曜、大人になってから初めて特急に乗車。

子供の時は特急電車は珍しくなかったのに、
新幹線の台頭にともない、利用エリアの特急の本数自体が激減。
自分で切符を買って電車に乗る年齢になってから、特急利用の機会がなくなった。
(最後に特急に乗ったのって、たぶん私が九歳の時で、身内の納骨の折だった。)

一日一本、出るか出ないか。
猫バスほどはレアじゃないけど……という特急電車を調べておいて、みどりの窓口にて発券。
いざ乗るにあたって、まず改札地点で挙動不審に。

新幹線ホームで乗りこむんだっけ?

やや、特急が発車する7番線って、掲示板に出てないぞ……。
あと3分後には発車なんだが……。

よく普通電車の駅のホームで、
「特急電車を先に通します」というアナウンスとともに特急車両が通過していく姿を、
あああーーーなんか腹立たしい気がする……と、じりじり見送ることは多いのだから、
当然、普通のプラットフォームから出るのが常識だったのに。
理解するのに、しばし戸惑う。

なんだかんだで無事に乗りこみ、発車して、車掌さんが乗車券チェックに巡回するのを、
――だよね! 普通のエリアから発車するから、Suicaだけで入れちゃうしね。
飛び乗ってから車内で特急券を購入する乗客もいるだろうしね、外せないルーティン! 大変だ!
内心いちいち感心しては、小さい驚きをもって迎えるのであった。

車内販売が行き来するのを横目に見ながら、
連れに「これは飛行機の飲料・軽食サービスとはちがって、有料なかんじ?」
と確認して、いささか引かれる。
だって聞くは一時の恥だもの。
相手に恥かかすような質問をやたらと訊きはしませんがね。
新幹線が有料なのは知ってたが、確認だよ確認。
特急の特別感に、脳内やや混乱が続くのだった。

で、子供の時も感じたが、特急は普通の線路をスピードを上げて走るせいか、けっこう揺れが独特。
快速や新幹線よりも、乗り物酔いをしそうな不安感がよぎる1時間であった。